うらぎりもの…

川原でお弁当を食べ終えしばらくした時にその声は聞こえた…
背筋にゾクッと悪寒が走りそれはまるで何かに睨まれているような感覚だった。
「じゃあそろそろ僕は仕事に行くよ」
「………」
わたしは辺りを見回す。
「どうしたんだい、ハヤ?」
と悠人さんがわたしに聞く。
「あ、ごめんなさい!でも今、誰か…」
しかし周りには人一人いなかった。
気のせい…?
「誰かいたの?」
悠人さんが心配そうにわたしに聞く。
悠人さんには何も聞こえていないようだった。
「い、いえ…何でもないんです、気をつけて行ってきてください」
わたしは無理に明るい笑顔で声をかけた。
「そう?じゃあ行ってくるね」
そう言って悠人さんは会社へと向かった。
でも確かにはっきりと…
そう思っているとハナがわたしの手を握る。
「どうしたの?ハナ」
ハナのその手は震えていた。
あきらかに何かにおびえているようだった。
「ハナ…」
わたしはハナを抱き寄せる。
ハナにはさっきの声が聞こえたのだと思う。
でもさっきの声は一体…
わたしはその日、胸騒ぎがおさまらなかった…

………

……



「あら、外出なんてめずらしいね、どこ行ってたの?」
「別に…」
「なんだか今日は一段と機嫌が悪いじゃん」
「そんなことないよ」
「ふーん…(まあいつものことか…)」
「ミレイ、次の調教者リストを出して」
「え?ちょっとあんた、何人受け持つ気よ」
「いいから」
「でも最近ずっと休んでないじゃない、少しは…」
「何度も言わせないで」

「はぁ…やれやれ…」



「はい、次はこの娘よ」
「そう…」
「ねえあんた、何か無理してない?」
「無理?」
「最近、ずっと仕事してるじゃない、今日だってまた…」
「無理なんてしてない」
「でも最近、雰囲気も変わったよね、話し方とかさ」
「別にそんなことない」
「でもさ…」
「もういいでしょ!ほっといてよ!」
「あーあ、怒って行っちゃった。

 …でも今のあんた、本当に辛そうな顔してるよ…



 ミオ…」



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