食肉という存在に恋をしてはいけないのだろうか…



僕は都内の進学校に通う高校三年生。
今年は受験の年…
進学校という事もありクラスメイトは一流大学を受験する奴がほとんどだ。
そんなまわりがとても殺気立ってるように感じた。
しかしそれとは対照的に僕はやる気もなく勉強も身が入らなかった。
なぜなら将来、何になりたいのか、そして何がしたいのか…
そういう夢や目標が僕には全くなかったからだ。
そんな事で成績はどんどん低迷していく一方だった。

「おかえりなさいませ」
「ただいま」
家へ帰るとメイドが挨拶をする。
そう、僕はいわゆるお金持ちのボンボンというやつだ。
「今日から悠斗様に勉強を教えていただく家庭教師の方が参られています」
「何それ、そんなの頼んでないんだけど」
「旦那様が悠斗様にと雇われたようでして…」
僕の父は厳格な人間で少しでも意見をすると平手打ちが飛んでくる。
この家で父の言う事は絶対なのだ。
そのせいか少し父には恐怖心というのを抱いていた。
仕方がないので家庭教師がいるという客間まで連いて行く事にする。
「こちらです」とメイドがドアを開けた。









一瞬、僕の中で時が止まったように感じた…
透き通るような白い肌、ウェーブのかかった青白い髪、
そして薄い赤のメガネと首輪以外何も衣服を身に着けていない裸の少女が立っていた。
僕はその少女の美しさに言葉を失った。

僕はこの時、彼女に恋をしたのだった…

「悠人様ですね、初めまして。私、この娘の担当をしておりますサキと申します」
「はぁ…」
少女の後ろから20代くらいの女性が現れ挨拶をしてきた。
「そしてこの娘は今日から一年間、悠斗様に勉強を教えさせていただきます製品番号s-0087と申します」
「せ、製品?」
「はい、この娘は人様に食していただく存在、食肉としてこの世界に生まれました。
 そしてこちらで一年間、食肉兼悠斗様の家庭教師として飼っていただく事となったのです」
聞いた事がある…人間そっくりな食用の生物。
しかし現物を目にするのは初めてだった。こんな綺麗な娘が…
「でも家庭教師ってこんな小さな娘が?僕より年下に見えるけど…」
「そちらは大丈夫です。今回、お買い上げいただきました食肉はsナンバー、
 この製品は生まれた時より英才教育を受けております。
 この娘の場合、一流大学に合格できるほどの学力を持ち合わせておりますので
 学力の方は私が保証いたします」
よく自体が飲み込めなかったが、でもこの娘と一年間一緒に暮らせるという事はとても嬉しかった。

しかしこの一年が僕の人生にとってけっして消えない辛い記憶となるのだった…



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