ごしゅじん…

あの娘の最後の声が耳に焼き付いて離れない。



無残に食べ残されているb-0338の姿。
私は涙が止まらなかった。
この姿を見て私は初めて後悔するのだった。
私は何て事を…
どうしてこの娘を助けてあげられなかったんだ…



私がb-0338に出会ったのは農林水産省の仕事で食肉の施設を視察した時だった。
b-0338を見た時、一人娘・宮子にどこか雰囲気が似ていると思った。
娘を産んだ時に妻に先立たれ、それもあって宮子を宝物のように育てた。
その宮子が事故で亡くなった時から私自身おかしくなっていたのかもしれない。
b-0338が宮子だと思えたら…
そんな事からb-0338を買う事にしたのだった。

しかしb-0338は食される存在。
自分を食べてほしい、その願いを叶える事しかできなかった。
一年間、彼女と共に過ごした。
自分を食してもらえる…その幸せそうなb-0338の笑顔を見るのが悲しかった。
悲しい表情をしているとb-0338は心配そうな顔で私を見上げるので
私はできるだけ彼女の為に笑っていようと思った。
いつからか私はこの娘を食すことによって宮子の事が忘れられるのではないかと思えた。
しかしそれはただの現実逃避に過ぎなかったのだ。



b-0338がいなくなってから私は酒に入り浸っていた。
私は二人も大事な娘を失ってしまった…
私が宮子の死が受け入れらなかった為にb-0338を死に追いやってしまったのだ。
その罪悪感、そして娘のいない寂しさが生きていく気力を失わせるのだった。
そして私は自殺を決意した。
しかしその日、彼が現れたのだった…




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