食肉として生まれたわたし達に人権が与えられてから一年余り…
食肉制度廃止後、わたし達は全国に用意されたそれぞれの養護施設へと入る事となった。
わたしの施設には6才から18歳までの30人ほどの食肉だった女の子が集まって生活している。
しかし未だに食肉制度廃止に反対している人達は多くいて
食肉として生まれたわたし達はよく思わていない。
そしてそれはこの施設でも同じだった。
この施設には食肉用の学校で職員をしていた人達がそのままこの施設の職員をしている。
そしてその職員達による暴力や性的虐待など日常茶飯事に行われている。
食肉だったわたし達に人間として対応する事が気に食わないのだろう。
わたし達はただ耐えるしかなかった…

わたしも無口でぶっきらぼうな事からよく暴力を振るわれていた。
しかしそんな時に助けてくれたのが二つ年上のa-0217だった。
彼女はスタイルが良く話し上手な事によりいつも職員からわたしをかばってくれた。
a-0217はわたしの事を妹のように可愛がってくれてわたしも彼女を姉のように慕っていた。
わたしだけではなく他の女の子も同様で一番年上のa-0217はみんなの姉のような存在だった。
そんな彼女は今、妊娠して半年ほどになる。
もちろんそれは職員の子だろう。
お腹はふくらみ少し重たそうにしている。
「大丈夫…?」
わたしは少し心配で尋ねてみる。
「大丈夫大丈夫!心配してくれてありがとね」
彼女はいつも元気で笑顔を絶やさなかった。

「わたしね、ママになれる事が嬉しいの。
 去年まで食肉として人生を終えるんだって思ってたから
 子供が産める事、育てていける事が何より嬉しい。
 きっと可愛いんだろうなぁ…」
と嬉しそうに話すa-0217。
わたしもそう話す彼女が微笑ましかった。

でも彼女が子供を目にする事はなかった…



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