わたしがこの施設に来て一年余り…
依然、暴力と性的虐待が続いている。
でもその事は世間に知られていないようだった。
時々、女の子がいなくなる事もある。
話によるとどこか違う施設へ行ったらしい。
でもわたしはその話に違和感を感じていた。

a-0217が妊娠して8ヶ月になる頃、
検査があるという事でa-0217が職員から呼び出しを受けた。
「行って来るね」と笑顔で手をふるa-0217。
わたしも不器用ながら笑顔で手をふった。

それから一時間ほど経った。
しかしまだa-0217は帰ってこない。
他のみんなもa-0217の帰りが遅いのを心配している。
そこでわたしは様子を見に行く事にした。
無断で部屋から出る事は禁止されているのだが彼女の事が心配でじっとしていられなかった。
こそこそと隠れながら職員に見つからないように廊下を歩く。

しばらく歩いた所で地下への階段を見つけた。
その階段を下りていくと一つのドアがありそのドアは少し開いていた。
わたしはその部屋に入ろうとした時、ドアの隙間から職員達の話す声が聞こえてきた。
「またこいつも高くで売れそうだな」
「ああ、これでまた遊んで暮らせそうだ」
わたしはその声のする部屋を覗いた。







………







……

















わたしはその光景に呆然と立ち尽くしてしまった。
メスやチェーンソーを持った職員の男達。
そしてその後ろには目隠しをされ手足は切り取られ、そして無残にお腹が開いている女性。
わたしはすぐにそれがa-0217だとわかった。
「なんで…」
わたしは頭が真っ白になってつぶやいてしまった。
その声に職員の男達がこちらを振り向きわたしの存在に気付いた。
「なに勝手に部屋から出てるんだ!」
男達が大声で怒鳴り散らす。
でもそんな事なんてどうでもよかった。
「なんでこんな事をするの…」
わたしはその声を無視して男達に聞いた。
「どうする?こいつ…」
「もう殺すしかないだろ」
男達が近づいてくる。
「どうしてっ!?」
男達はわたしの叫び声に少し竦んだ。
わたしは生まれて初めてこんな大声を出したのかもしれない。
「ちっ、どうせお前もここで殺すから特別に教えてやるよ。
 用は金だ。今のお前らの肉はあの頃の倍以上の値段で売れるんだ。
 またこいつみたいに子宮に入ったままの赤ん坊は食材として高く買ってもらえるしな」



パンっという音が静かな部屋に鳴り響いた。
わたしがその男に平手打ちをしたのだ。
許せなかった。
母親になる事をあんなに楽しみにしていたa-0217の夢を奪った事が…
「なにすんだ…」
わたしは男に顔を殴られ倒れこんだ。
そして透かさずみぞおちを蹴られ苦しさにうずくまった。
「食肉の分際で人間に逆らっていいと思ってるのか?」
男がわたしを見下しながら話す。
「わたし達は人間…あなた達こそ人間なんかじゃない!」
わたしは苦しみを堪えながら言い返した。
「この…!」
そういうと男は包丁を掴みわたしに振りかざそうとした
その時、他の娘達が部屋に入ってきて男達を押さえつけた。
「早く逃げて!」
彼女達はずっとドアの外で話を聞いていたのだろう。
わたしは立ち上がりその場から立ち去った。
逃げたのではない、助けを呼びに行くのだ。
わたしは殴打されたところに痛みがありながらも全速力で走りそして施設の外に出た。
この施設に来てから外に出るのは初めての事だった。
わたしは人の多そうな大通りに出て出来る限りの声で助けを呼んだ。
しかし誰一人としてわたしの声を聞こうとしない。
それどころか冷ややかな目で見られているようだった。
わたしは愕然とし座り込んでしまった。
「どうして…」
わたしの目から涙があふれる。
その時、わたしは肩をつかまれた。





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