僕はベットに仰向けになりただ天井を眺めていた。
ハヤのあの涙…ハヤは僕のことを…
例えそうだとしても僕はその気持ちに答えることができない。
それは今でもs-0087のことを忘れられないからだ。
でも本当にこれでいいのだろうか…
彼女をこのまま行かせていいのだろうか…
僕はどうしていいのかわからず動くことができなかった。





………





……











あたりは白い霧で何も見えない。
僕はその中をあてもなくただ歩いていた。
するとぽつんと人影があるのに気付いた。
僕はその人影の方へと歩いていく。
そしてだんだんその人影の表情が見えてくる…





















「s-0087…」
そこにいたのはs-0087だった。
彼女はこちらを見てにこっと微笑み
「悠人様」
と僕の名前を呼んだ。
僕はとっさに彼女を抱きしめてしまった。
「ずっと…ずっと会いたかった…」
彼女も僕を抱きしめ返す。
「悠人様…」
それからしばらくして僕は彼女の顔を見る。
透き通るような白い色にウェーブがかった青い髪…
目の前にいるのは本当にあのs-0087だった。
そしてその彼女が僕の目を見て口を開いた。
「ずっとわたしのことを想っていてくれたのですね…」
「ああ…」
そう答えると彼女は少し悲しそうな顔をした。
「でもわたしはもう悠人様のそばにいることができません…」
僕はその言葉に涙があふれてしまった。
わかっているつもりだった。
彼女がもういないという事実を…
でもどこかでまだ信じたくないという気持ちがあった…
「ごめんなさい、また悲しませてしまいましたね…」
そう言い僕の頬に流れた涙を手で拭ってくれた。
彼女のその手は暖かかった。
「悠人様、わたしの最後のお願いを聞いていただけますか?」
最後という言葉に胸が苦しくなった。
でも僕はうなづいた。
彼女を悲しませたくなかったからだ。
彼女は髪飾りを外し笑顔でその髪飾りを僕に差し出した。



「s-0088を…妹のことをお願いします」
僕は少しためらったがその髪飾りをゆっくり受け取った。
「ありがとうございます、悠人様…」
その後、あたりは白い光に包まれていきs-0087の姿がどんどん消えていく…
そして最後に彼女はこう言った。

「わたしはずっとあなたたちを見守っています…」





………





……











気がつくと僕はベットの上で眠っていた。
夢…だったのだろうか?
でも彼女の笑顔、声、ぬくもり…
全てが鮮明に記憶に残っていた…
そして僕はふと手の中を見た。



そこにはs-0087の髪飾りがあった…





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